イケメン御曹司に独占されてます
野口くんが歯切れの良い声で読み上げていくデータを、私が今出力した伝票を見ながら、ひとつひとつチェックしていく。


「合ってたか」


「はい。大丈夫です」


「んじゃ、発注」


パン、と硬い音がして、池永さんがエンターキーを叩く。
黒い画面に赤い確認文字が出て、発注完了だ。
時計は十時五十五分。
オーダー締切五分前。


一気に緊張が緩み、へなへなと膝から力が抜けていく。


「お疲れ。……野口も、サンキュ。悪いな、手伝わせて」


「いえ。別に急ぎの要件無かったですし」


爽やかに微笑みながら、野口くんが机の引き出しからチョコを出して私の机にそっと置いてくれる。

糖分でも摂って落ち着けということだろう。
池永さんに気づかれないように机の影でこっそりチョコを口に入れて顔を上げると、冷たいメタルフレームが私を見下ろしているのに気づいてゾッとする。
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