イケメン御曹司に独占されてます
「そうだ。……昔、うちで飼っていた犬が死んだ。その時のトラウマだ。何故だか泣いているお前を見ていると、その犬を思い出す。他の番犬と違って、ただ可愛らしいだけが取り柄の小型犬だったが」


い、犬!? それに可愛らしいって言った!?
ショックなのとちょっとだけ嬉しいのとで、私の涙は一瞬で止まる。


「全部トラウマのせいなんだから仕方ないだろ。だからこれからも、お前が泣いたらこうして抱きしめる」


「えっ!? いつもですか!? これからずっと?」


「俺のトラウマが治るまでだ。……お前、こんなに世話になっている先輩を見捨てるのか? トラウマが長引けば、心的外傷後ストレス障害になることも有りうるんだぞ。俺がそうなってもいいっていうのか?」


「そ、そんなことありません。……分かりました。早く治るように、私も何か方法を考えてみます」


「別に何もしなくていい。こうしているだけで癒される。……それより、今週ずっと俺を避けてたのはどうしてだ?」


池永さん、気づいてた!? 
避けていたのは、池永さんが好きだと気づいてしまったからだけど、そんなことを言えるはずもないし……。私の声はだんだん小さくなっていく。
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