イケメン御曹司に独占されてます
劇場の近くにある、大きなビルの前。
待ち合わせ場所であるここへ来てから、既に一時間が過ぎようとしていた。
開演時間はとっくに過ぎてしまっている。


約束の時間になっても現れない池永さんに、最初はドキドキしながら待っていたけれど、次第にイライラした気分が襲ってきて——。

連絡しようにもスマホの電源は切れて、いくら起動ボタンを押してもウンともスンともいわない。


せっかくもらった券を無駄にしてしまった、なんて最初は思っていたけれど、時間が経つにつれ、だんだん不安な気持ちの方が大きくなってくる。


普段、池永さんが時間に遅れるなんて、滅多にあることではない。


もしかして、急に電車が遅れたとか? 何かトラブルがあったとか? まさか……事故に巻き込まれたとか!?


一旦悪い方に傾くと坂道を転がるように次々と暗い考えが浮かんで、心配でたまらなくなる。


どうしよう。
公衆電話を探して池永さんに連絡する? 
だけど、この場所を離れている間にもしも池永さんがここへ来て私がいなければ、きっとそのまま帰ってしまう。
だめだ、この場所は動けない。
池永さんが来るまで、絶対に動けない——。



< 184 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop