イケメン御曹司に独占されてます
「秀明さん……っ。あ、あの、私、わざとじゃ……」
「悪いけど、ここの後始末しといて。……福田、来い」
慌てふためく広瀬さんの顔を見ることなく、池永さんは私の手を掴んだままその場を後にした。
「まだ痛いか?」
「いえ、もう大丈夫です」
幸いなことにやけどというほどでも無く、しばらく水で冷やすと痛みも取れた。それでも水で濡らした池永さんのハンカチを手に巻かれたまま、席に戻る。
フロアには既に私たち以外の人影は無く、時刻は十時を過ぎていた。
「池永さん、資料……」
「あぁ、もう見た。良くできてるからこれでいい。今日持って帰ってもう一度確認するから、明日の朝人数分用意して」
「分かりました」
「……今日はもう片付けろ。これ以上新入社員を残したら、人事から注意される」
「すみません」
「……」
池永さんは黙ったまま私のパソコンの電源を落とし、机の上を片付けてくれる。