イケメン御曹司に独占されてます

わざと聞こえるように言ってくるふたりを、無視するようにエスプレッソのボタンを押す。


シュウっといい香りをさせながら落ちてくる、泡立った液体を待ついつもならホッとする瞬間も、こうなるととても苦痛な時間だ。


ようやく出来上がった紙コップを持ってさっさと立ち去ろうとした私に、何故か広瀬さんが足早に近寄ってきた。
そして突然体をぶつけてくる。

あっと思った時にはもう、その衝撃で今買ったばかりのエスプレッソが手にこぼれ落ちていた。

「熱っ……」


手に感じた熱で思わずカップを落としてしまい、そのまま中身がスカートや床に飛び散る。


「あっ、ごめーん。前よく見てなくて」


意地悪そうに私を覗き込んだ瞬間、その顔の後ろから突然現れた背の高いスーツ姿が、広瀬さんを押しのけて私の腕を掴む。


それを見た広瀬さんの顔色が変わった。