白いオレンジ


「もっかいキスして」

「どうしたの美香ちゃん。欲求不満なの?」

「ケータイ弄ってないでさー、こっち向いてよ」


沈黙が少し続いてこれ以上話を聞いてるのはいけない気がして、

携帯を探すのは部活が終わってからにすることにした。


教室から離れようとすると…


「陽向…好き。あたしのこと、彼女にしてよ」


美香ちゃんの声が聞こえて、悪趣味だと思いつつも、聞き耳を立ててしまった。


「オレが彼女作らないのは知ってるよね?
そういうこと言うなら、美香ちゃんとはもうこういうことしない」

「やだ!嘘。今の嘘!だから…そんなこと言わないで」

「………」

「ねえ、今日さ、お母さん帰り遅いんだよね。うちに来てよ。続き…しよ」


耳を疑った。

美香ちゃんの言葉が何を意味してるかなんて想像はつく。


私の中の陽向くんのイメージが変わっていく。


「いいよ」


陽向くんの静かな声が聞こえて、思わず走った。

逃げるようにその場を離れた。


眩しくも感じた陽向くんのイメージが暗い闇に包まれていく。


< 23 / 27 >

この作品をシェア

pagetop