今宵、君の翼で
「うわっ!コレかれぇーっ!」
ゲホゲホとむせりながら、水をがぶ飲みしている。
「当たり前じゃん! これトムヤムクンだもんー辛いよ!」
「まじかっ初めて食ったわ! かっれぇー!」
涙を流しながらヒーヒー言っている。
その光景が可笑しくて笑ってしまった。
暴走族の総長なのに、このくらいの辛さには弱いんだ……
「あははははっウケるしー!」
「あー、やっぱ笑ったほうがいーな」
「え?」
「美羽ってさ、全然笑わないっしょ」
「そんなことないよ? 昨日だって楽しかったし」
「でも心から笑ってねぇよな? 今みたいに」
今までちゃんと笑っているつもりだった。
笑えてなかったってこと?
「美人なんだから無愛想にしてると、もったいねぇぞー?」
「美人なんかじゃないよ」
「わかってねぇーんだなー。今朝うちのチームのやつらがお前のこと言ってたし。あんな可愛い子見たことねぇって。モデルでもやってんの?」