流れ星に4回目の願いを呟く時。
 由美子のひと言に答えるのに僅か数秒くらいしか間は無かったのだが、随分と古く長い光景が一瞬のうちに私の中を駆け抜けていた。


 眠りかけの脳に、ノイズだらけの白黒映画のフィルムがガタリ、ガタリと映し出されるように、中学時代の光景が断片的に蘇った気がした。


 懐かしいあの古びた教室の後ろの方で、楽しそうに笑みを浮かべながらクラス旗を作るカケルの姿も浮んでいた。


「確かにもうダメかもね。」


 由美子はコーヒーカップの取っ手をなぞりながら、低い声で言った。


「あんたがもうダメだって思っているなら、そうなのよ。それまでのこと、なんだよ。」


 それから私は何も言えなくなって、ただただ時間だけが過ぎていった。


 これから何をすべきなのか、何処へ向かえば良いのか。


 私は未だ、それを見出せていないのだ。





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