私の小さな願い事
慶応 三年 春

私の中

京を離れてからしばらく経つけど

新選組が幕臣に取り立てられたとは

まだ、聞こえてこない



桂さんの見立てでは、慶喜様は必ず新選組に頼る

そう言っていた


寒いなぁ


チラチラと舞う雪を見上げ


綺麗だなぁって… のん気にしてたら


「誰だ!?」

「へ?高杉さん?私だよ?」

「……桃が今、知らない女に見えた……
右目の下に泣きぼくろがあって
髪が長く、色白で… なんだったんだ?」

高杉さんの言う、女の特長が

すべて、優に当てはまるから

私… 


「どうした!!桃!!なんで、泣いてっ
……ごめんな!?俺、変なこと言ったな」


大慌てで、抱きしめてくる


「高杉さんの見た人、私…知ってるの」


高杉さんに、生い立ちを話した

すると


「その……優って子
桃の中にいるんじゃねぇか?」


不思議な事を言い出した


「毒を飲んだ日に、優が亡くなったんだろ
桃のことが心残りで、ふわっと
様子を見に来てみれば、馬鹿が毒とか飲むもんだから
助ける為に、中に入ったんだ
ほらほら、逃げるときから
目や耳が良くなったり
子供だって、ひとりで産むのは、大変だ
手伝ってくれたに違いない!!
実は……
桂さんが妙な事を言っていたんだ」


高杉さんの言葉には、すごく

説得力があった

馬鹿は、余計だけど……


「桂さんが廃寺で桃を見つけたとき
寺の中に光が見えたんだって!!
きっと、優が桂さんに見つけて欲しくて
ここだよって知らせたんだ!」


あの時、私はちゃんと気配を消していた
優里の気配でも悟られたのかと
思っていた


「それに…
船で、一緒に死ぬとか言った後
本当に、死にそうだったろ?
だけど… すぐ良くなったろ?
あれは、死ぬことの怖さを教えたかったんだ!間違いない!!
桃は、自分のことすぐ諦めるから…」


優が……


私の中にいる?





だからなの?

歳三にドキドキしたり

歳三に口づけしたくなったり


優がいるのね






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