私の小さな願い事
慶応 三年 秋

失って気づくもの

京に到着した


「桃ーー!!!」

屋敷の長州藩士達から、熱烈に歓迎された


「飯ーーー!!!」


私…というよりは、食事ね

がっくり





まず最初に、天子様に会いに行った

大政奉還 王政復古の事を桂さんに

説明して貰った


「すぐに返事は、出来ぬ
考えさせてくれ……」


この国全体を左右すること

難しい決断よね










次に、歳三にひとりで会いに行った


「こんばんは」

「はぁ~また忍び込まれたか……」

「会いに来たのに!」

あからさまにがっくりするから、腹立つ


「屯所が変わっても、警備が変わらねぇなって、思っただけだ
こいよ!」

両手を広げ待っている……

私、もうそんな年じゃないんだけど……

ガバッ



歳三の音



「歳三……
明日、慶喜様のところに行く」

「は!?何で!?おまえなぁ!!」


私は、歳三の懐から離れた



「桂さんのお手伝いがしたいの
私に出来ることが、まだあるみたいなの」

「大政奉還だろ」

「さすがね… 新選組には、嫌な話よね
御陵衛士だっけ? 分離して
戦力が低下しているって、聞いたわ」

「依里
政に関わるな
戦なんかに、民やお前を巻き込むことは
避けたい
慶喜様には、会いに行くな!!」

「偉そうに!!私、歳三の部下じゃない!」


歳三が、固まった

え?

なんか、変なこと言った?

怒ってる???


え……


今度は、私が固まった

歳三が私に口づけしたから…


あ……


この前の仕返し?


「これでも行くって言うのか?」

「歳三…」


歳三が私を抱きしめる

私も、歳三の背中に手を回す


「多津のお墓参りをしたいの
それに… 
慶喜様にちゃんとお別れを言うわ
私、コソコソ生きるのには、向いてないの
知ってるでしょ?」


「知ってる
でも、俺の弟子だった依里じゃない
今は……普通の娘だ
戦いとか、政とか、そんなことに関わり
傷ついて、泣いて
依里が笑ってくれてないと…俺」


今日の歳三は、変だ

愛おしい人でも見るように

私を見つめ

優しい口づけをしてくる



高杉さんには、唇同士が触れるだけのでも
殴って拒否してたのに

歳三の口づけは、拒むどころか

自ら受け入れている



私… まだ、歳三が好きなの?



歳三の手が、私の体を触る



ガバッ



歳三を押し退けた



「私…優じゃない」



バタバタと、新選組の屯所

不動堂村を出た


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