私の小さな願い事
~土方歳三~


依里が帰ってから、徹夜で仕事をした

朝稽古で、ひとしきり大声を出し

朝餉



「依里、来たのか?」

「ああ」

「ずりぃよな、コソッと会ってんだから」

「歳!なぜ、誘ってくれんのだ!?」

「夜中だぞ?誘えるかっつうの!
それに、総司の見舞いに来たんだ!」



幹部らの依里好きは、健在だ



その夜




「依里が来るかも」

という、期待で永倉、原田、それに

近藤さんまで…


「せめぇよ!!仕事出来ねぇだろ!!」


俺の部屋に布団を敷いて、くつろぐ


「気にするな!!」


無理だろ…



「久しぶりだなぁ?
こうしてひとつの部屋でねるのは」


「京に来たての時以来じゃねぇか?」


永倉の言う通り、それくらいぶりだろう


「副長」

天井から山崎の声がした

「なんだ」

「桂から文を預かりました」

「は?」

「降りれないので落とします」  

「おう、落とせ」

「桂が、返事が欲しいと外にいます」


天井からの文を受け取る


内容は、依里の事だった


旅と連日連夜の外出で疲れたらしく
倒れたそうだ

そして、自分の身の振り方を悩んでいる

しばらくは、京に留まるように言った

そちらがよければ、昼間に行かせたい
男装なら、いいだろうか

敵同士が文のやり取りなんておかしい

だが、正直…桂に感謝している


依里が無事に生きているのも

奴のおかげなんだからな


「近藤さん…いいか?」

「俺の妹だ!いいに決まってるだろ?」


文の返事を書き、山崎に持たせた





少ししてから、山崎が戻った

「桂から伝言です
依里がどんな決断をしても、受け止めて欲しいと…」


悩ませてるのは…



弟子に恋心を抱き

危険になるのに、そばにおきたい

失いたくない


依里がそばにいないことが


辛い


怖い




俺は、依里に惚れて臆病者になったようだ






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