私の小さな願い事
年が明けた


「桃さん!!初詣いきましょう!!」

「ごめんなさい…私、行くところがあって」


昨日、旅籠のご主人と話し合って
仕事を辞めた


私は、高杉さんと恋仲であったわけでないけれど、お家の人達から

あまり良く思われていない

だから、出家を勧められた


私もそれがいいと思った



だって



遠藤さんの気持ちには、答えられないし

かといって、歳三を追いかけて足手纏いには、なりたくない


桂さんには、後で文を出せば良いか



「桃さん?」

「遠藤さんありがとうございました」



さよならの代わりに感謝の言葉を言った


「やだなぁ~お別れみたいに」

「うふふっ すみません
せっかくお誘い頂きましたから
いつも、気に掛けて下さいましたし」



高杉家から、紹介されたお寺で

あれこれとしきたりを学び

普通の女性より、短い髪をさらに切った

寒っ



でも、すっきり


住職の女性に目や耳が悪いことを伝えた


荷物を部屋に運び、住職に頼んで文を書かせて貰った

桂さんに、新年の挨拶


出家のことは、書くの辞めた


居場所は、知らせない方がいい


時々、一方的に文を出そう







お寺の生活には、すぐ慣れた


庭の枯れ枝にとまる鳥をみたり

池でなにかが跳ねる音


ずいぶんと悪くなった目や耳で今を感じる



桜が咲くまで、目が見えたらいいな……







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