私の小さな願い事
明治 元年 春

付添い

あっという間に桜が咲いた

子供たちと優、高杉さんや平助、兄

色々な人を思い、涙した


ん?このにおい……

振り返り、目を細める

「捜したぞ」

「桂さん?」

「今は、木戸と名乗っている」

「桃さん」

「遠藤さん!!やっぱり、桂さんが
様子見させていたのね!?」

「木戸だ
遠藤とは、旅籠で偶然会ったのだ
様子見なんて、旅籠の主人がしてくれる」

「あれぇ?旅籠のご主人もここは知らないのに、どうしてわかったの?」

「高杉の墓参りに行って、家人にきいた」

「なるほど」

「桃さん!!俺と一緒に大阪に行きませんか?」

「え?あー、行かないです
ごめんなさい
私、ここでのんびり暮らします
もう、あまり目も耳も利かないので」

「遠藤……桃がここを選んだんだ
高杉のとこから言われたって、桃は嫌々
我慢するなんて、器用な奴じゃない」

「桂さん?」

「木戸だ」

「木戸さん!!桃さんがこの若さで出家して
いいんですか!!」

「遠藤さん、私がここにいたいのよ
心が落ち着いて、穏やかに過ごせるの
どうか、そっとして貰えませんか?」

「じゃあ……なぜ、泣いていたのですか」

「桜には、たくさん思い出があるので
この目で見れる最後の桜を満喫しておりました
けして、悲しいからじゃありません」

「ここにいるなら、名を偽る必要はない
体に気をつけろ!元気でな… 依里」

「桂さんも、お元気で!」

「木戸だ」

「あははっ… 覚えられない」

「木戸さん!!いいんですか…… 」

「遠藤さん 私、徳川依里と申します
どうか、何も聞かずお別れを……」

徳川と聞いて、色々考えが巡るだろう

それなのに


「また、帰省の時に寄らせて貰います」


いい人だと思う


「お気をつけて、いってらっしゃいませ」



遠藤さんが、門までスタスタ行ってしまった

桂さん じゃないや、木戸さんが

私の頭を撫でてくれた


「いい女に出会えた…幾松っていってな
そばで陰ながら支えて貰った
要約、幾松の気持ちを組むことが出来てな
もし、婚礼となれば祝に来てくれるか?」

「あら?おめでとうございます
目が見えなければ、行けませんね」

「遠藤に連れて来て貰う」

「どうして、遠藤さんなの?」

「陰ながら支えて貰ってたんだろ?」

「物で吊る感じだったけど?」

「男は、気が利かないんだよ」



二人が帰った後



いや、遠藤さんは気が利く

物は、物でも私に必要あるものをくれた


ずっと、支えてくれていた



また、桂さんに教えて貰ったなぁ






木戸さんだった







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