私の小さな願い事

久しぶりに新選組へ


もっぱら仕事の話をして

相変わらず笑わない歳三に

私は、ニコニコと話す


「藤原孝頼という名が何処にもない…
何でだ?」



調べたんだ……



「そろそろ失礼します」



さらりと流して立ち上がると


「あっ!!饅頭の頂き物があるんだ!!」

「それは、良いですね!お茶を!!」



近藤さんと山南さんがそそくさと部屋を出る

歳三と二人きり


「ふふっ」


歳三も良い仲間に恵まれたんだ



「藤原孝頼という名は、あるお方から頂いた名だ
偽名といえば、そうかもしれない
名簿に名前が載らないのは、俺が幕府とは別の方に遣えているからだよ」



歳三は、疑ったことを申し訳なく思っているのか、何も言わない



「今度こそ、ここに来るのやめるよ……
このままじゃ、歳三の弟でいられなくなりそうだから……」


にっこり笑って


「近藤さんと山南さんによろしく伝えて」


呼びとめられることもなく


新選組の屯所を出た




歳三……




歳三から、笑顔を奪った代償は

大きすぎる



私に、耐えられるかな




歳三の弟でいられなくなるなんて

考えたことなかった




頬を伝う涙を見られないように



屋根づたいに御所まで帰る







私は、自分が傷つくことを恐れ


歳三との間に壁をこしらえたんだ…









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