私の小さな願い事

喋らずの姫

~土方歳三~



二階に一人で上がったまま総司が下りていない

永倉が言った


「女は?」

「多分、二階だと思う
縄で後ろ手に縛られてた」


総司なら、助け出せたはずだ

静かな二階に上がる


途中、死んだふりした奴がいたから

斬った


一番奥の部屋入り口付近で、部屋の中から

バタン


人の倒れる音


中を見ると総司の横に女が倒れていた

総司が倒れた音か?


一人で奮闘したから、疲れたんだろう


心配して、二階にきた近藤さんが総司を

俺は、女を抱え下に


夜明け前の薄明かりに見た女の顔に


思わず落としそうになった


よりにそっくりだったから



しかし… 上等な着物を来ている


そこらの姫じゃねぇよな……




目を覚ます気配がないので



屯所に連れ帰る







すっかり上がった陽の下で見ても

よりそのもの……



「どういうことだ?」

「わからねぇ……
怪我はないから、起きたら聞こう」





なんと、女の目が覚めたのは、二日後



途中、着替えさせようということになり

山崎と二人で脱がせ

間違いなく女であることを確認してしまう



ジロジロ見たわけじゃない



布で隠しつつしても


隠せないわけで……



とにかく、覚醒したが


ボーーーーッとしていて

話にならない



食事すら口にしない



物は試しだ



「依里」



昔みたいに、笑って見ても

キョトン


依里、より、孝頼…



違うか……





「奉行所に届けよう」

「そうですね……」


近藤さんの言葉に山南さんが頷いた



「身元不明の女を預かっていると、言うだけでいい
こいつは、ここで面倒見よう」


「歳… 
四六時中そばにいるわけにはいかんだろう
この子に何かあったら、どうする?
ここは、男ばかりで山崎くんだって、休ませてあげないと」

「俺の部屋で、面倒見る!!」


「土方くん……より君に似ているからって
君が責任を感じる必要はないんだ
あっ!より君の双子の妹とか??」


山南さん!!さすが!!!


「おい!!お前、依里を知ってるか?」


パチパチと瞬きするだけ


違ったか……



ああだこうだと話をしていると

ふらっと立ち上がろうとした

しかし、足に力が入らないようで

倒れそうになる


「危ねぇ!!」


抱きとめた

ジーーーーッと俺の顔を見上げ

コトリと俺の胸に頭を預けてきた

警戒心のない女だ

そのまま寝てしまった






< 44 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop