私の小さな願い事
バクバクと心臓が煩い


男を見据え、隙を捜す


この男… 強い




だけど、歳三仕込みの剣術で負けるわけにはいかない


動き憎い着物を引き釣りながら、ジリジリと詰めよる


「御所の姫君は、剣術を使えるとは驚きだ」


男が、バカにして笑う


何度か男の刀を受け、力の差を思い知る


だけど、小さな体の私の動きに惑わされた隙を突く


私は、初めて人を斬った

集中が一気に途切れ、腰が抜ける



呼吸を整え、沖田さんの所まで

四つん這い


体を揺さぶるけど、反応がない


怖いよ……

起きて……


何処にも怪我はない


人を斬った感覚、血の臭いに


気分が悪い


静かな中にヒタヒタと足音が近づいてくる




もう、戦えない



腰が抜けたままだし……



怖いよ……




開いたままの部屋の入り口に


血塗れの刀が見え、もう駄目だ



恐怖が絶頂に達した途端、真っ暗になった





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