私の小さな願い事
元治 元年 夏

徳川依里

東宮様に状況を報告すると

御所に行った


今日の姫様は、しっかり目を開けている

一日、庭を眺め

時々通る幹部らに

にっこり笑ってみたり

調子が良いようだ



優が帰ってきた


「姫様!!東宮様から、コレを!!」


桜の刺繍のあしらったにおい袋

姫がそれを受け取り、クンクン

にこっと笑い


「ありがとう」


!!!!!


喋ったのだ!!!


「声まで、依里にそっくりだな…」

「依里ですけど?」


コテンと首を傾げる


聞き間違えじゃねぇよ……な???


「姫様??ご自分のお名前がおわかりに?」


にっこり笑ってにおい袋をクンクン


「聞いてますか?姫様?」

「依里!!俺がわかるか???」


また、首を傾げにっこり



それ以上、喋ることなく



いつもの時刻に寝付いた

姫様の隣で

優に問いただす


「話せよ!!」


小さなため息を漏らし、優が話し始める


「依里様と初めてお会いしたのは、三年前
山猿のような方で、女子とは信じられないほどでした
貴方と離れ、大奥に入ってから
何回も脱走をしようと頑張って…
一年たった頃、家茂様と顔を合わせ
双子ゆえ、そっくりなお顔に、自分が
徳川依里であると認識されました
そして、諦めたんです」


目を細め、依里の頭を撫でる



「それからです
喋らなくなり、必要以上に食事もせず
動くこともやめ、畳か壁ばかり見て
それでも、この可愛らしさです
家茂様が東宮様との縁談をすすめてくださりました
しかし…東宮様は、依里様に必要なのは
夫ではなく、自由だろうと…
私達は、隠密になり東宮様に遣えています
言っておくけど… 依里様はそのうち東宮様に嫁ぐ予定ですので、馴れ馴れしく
触らないで!!わかった!?」



優がどれほど依里を大切にしているか
よくわかる



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