イジワル社長と偽恋契約
仮眠室で何度も髪を整えたにも関わらず、私は髪を手でとかしながら少し緊張しながら答える。




「寝たおかげでだいぶいいです。ありがとうございました。…会議はどうでしたか?」

「電話で手短に済ませたよ。俺が参加しなくてもいいくらいの内容だったから最後に「今後はずっと電話参加を希望する」と伝えたら笑っていた」

「そうですか…」


良かった…

無事に会議も終わったみたい…それにそれ程支障もなかったようだし。






「今回はこれで済んだが次からは気をつけろよ。小さなミスでも仕事には大きな影響が出る事があるからな」

「はい。すみませんでした」

「あと…明日は特別に朝の弁当は作らなくていいぞ。お前も疲れがたまってるんだろ、少し安め」


厳しい事を言いながらも最後は優しい言葉をかけてくれる。

そういう所は宏伸社長そっくりだ。

私はお礼を言った後で旭さんに深く頭を下げると仕事に戻った。



少し仮眠したからさっきよりは体調が良くなった気がして体が軽く感じる。

だけど理由はそれだけじゃない…



旭さんと話してる時の自分は以前と明らかに違う…

声のトーンが少し上がってるのは自分でもわかるし、なるべく良い印象に見せようと自然に笑顔になっている事にも気付いていた。



私は自分のデスクに腰掛けてパソコンに向かうと、一瞬だけ旭さんの事を見た時に胸がドキッと鳴った事を確信した。



私…旭さんのことを意識してるんだろうか……

それは仕事のパートナーという関係を越えて異性として…


そうじゃない。

そんなわけないと頭では繰り返しているのに胸の鼓動はどんどん高まり、体は正直なんだと思い知らされた。



忘れかけていた恋愛のスイッチが私の中で押されたのだろうか…

まだそれを確信出来ないままその日はなんとか仕事を終えた。
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