イジワル社長と偽恋契約

過去にサヨナラ

季節もすっかり寒くなり12月に入ったばかりの朝。


今日は午前中から外で会議があり、私は珍しく同席を許され旭さんと取引先の会社に来ていた。
待合室で旭さんはさっきからイライラした様子で、私はハラハラしながら何度も時計を確認する。






「…この俺を待たせるなんて……完全になめられてるな。父だったらこんな事は今までなかったはずだ」


定刻通り取引先を訪れたのに社内トラブルとやらで会議が遅れている様子…

私達はもう10分も待たされている状態。


待つのが嫌いな旭さんの雷が落ちるのも時間の問題か…






「トラブルみたいですから仕方ないですよ」

「そんなもん知るか」


不機嫌なオーラで足を組み直す旭さんを見て、私もこれ以上待つのはまっぴらだと思った。

このままだと旭さんの怒りの矛先は確実に私に向けられるからだ。






「もう少し待ちましょう。今日のランチは社長の好きな和食レストランにしましたから」


私がそう言うと旭さんは黙ったままため息だけついて、待合室の窓の外を眺めていた。

その行為に心の中でクスッと笑う私は、また胸がドキッと鳴った事に気がつく。




旭さんに対する微妙な気持ちはまだ平行線のままで、特に何の変化もなかった。


師走で年末に向けて忙しく考える時間がないのもあるが、こうやって隣にいる旭さんの腕が触れる度に嬉しいと思うということは、

やっぱり私の気持ちはもう決まっているんだろうか…
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