イジワル社長と偽恋契約

越えた距離

ブォォーーン…


車内は静まり返っている。

会話もラジオも音楽もない…


すれ違う車やエンジンだけが聞こえて、私は石のように固まりながらさっきのキスのことをずっと考えていた。




さっきのキスはどういう意味なんだろう…


向こうから煽られたっていうのもあるけれど、私もとっさについやってしまった…


旭さんのこと好きだって認めたのは良かったけど、やっぱり上司と部下があんな事しちゃまずいに決まってる…


私に好意を持ってして来たとは到底思えないから、旭さんからしてもきっと火遊びの延長に過ぎない感覚だということもわかってる。


わかってるけど…

一応確かめたい。






「…!」


しばらく走って周りの景色を見ていると私はハッと気がついた。


ここは旭さんの住むマンションの近く…

もしかして…このまま家に行く気なの!?






「あ、あの!」


思わず旭さんに声をかける私。

家に向かってるってことは…つまりそういうことですよね?


それは本気でまずいって!





「…何だ?」

「あの…これからどこに行くんでしょうか?」


自分の勘違いだったら恥ずかしいから、まずは行き先を聞いてみる。
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