イジワル社長と偽恋契約
「俺の家に決まってるだろ」


旭さんのその言葉に頭から大きな石が落っこちたような気持ちになり、私は慌てて声を荒らげる。





「それはダメですっ!いくらなんでもそれはっ…」

「何勘違いしてんだお前は」

「へ?」


真っ赤になっていた顔が一気に正気に戻り、頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになる。




「今夜は俺の家で2人で飲み明かそうって言ってるんだよ。お前も今日は色々あったみたいだし元気づけてやってもいいって言ってるんだ」

「社長…」


旭さんの事をまるでケダモノみたいに思ってしまった自分が恥ずかしい。

彼はそんな人間じゃないことはどこかでわかっていたはずなのに…





「ま、どうしてもと言うなら相手してやってもいいけど」

「け、結構です!」


からかうように微笑む旭さん。

この人はよくわからないけど、やっぱり優しいってことはわかる。


それにしてもさっきのキスはどう受け入れればいいのか…

こうやって旭さんとはいつものように会話が出来ていても、頭の中ではどこかキスのことを考えてしまう…



あれはとっさの成り行きなんだろうか…

もちろん私はそうではなかった。


私は彼を好きだから…あの時気を許したまでなんだけど…


旭さんは?

そう聞けたらいいのにな。


まだ勇気がない…















「………ん」


翌日。

自然に目が覚めるとまだ外は薄暗くて、じんじん痛む頭痛と若干の吐き気がして重い体を起こした。
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