イジワル社長と偽恋契約
「社長にお客様がいらっしゃってます…」

「客?」


気まずそうに言う社員の表情と「客」と聞いて何だか妙な胸騒ぎがした。





「館林様とおっしゃる方で…」


その名前を聞くと、旭さんの顔が一瞬で険しくなり何と怖いオーラを出す。





「館林と名乗る者は全て通すなと言ったはずだ!」

「はいっ、しかし…どうしてもおっしゃってその……私共もお手上げになってしまいまして…警察沙汰にはしたくないですし」

「旭さん!」


すると、後ろからかん高い女性の声がして振り返ると綺麗な女性が笑顔で立ち旭さんに手を振っていた。



誰…?


女性は白のワンピースに高そうなコートを羽織っていて、

ブランド物のバックを持ち自分の身なりにかなりお金をかけていた。


誰が見ても美人だと思う顔立ちと華奢でスラッとしたスタイル。

そんな完璧といっていい程の女性が旭さんに向かって手を振っている。


それだけで私の胸は傷んだ。







「恵…」


嫌そうな表情ではあったが、隣にいる旭さんがボソッと言ったその名前。

聞き間違いなんてしない…

今確かに「メグミ」と言った。


頭によぎるのは旭さんの家の物置にあったプレゼントに添えられたメッセージカード。

あの宛名も「megumi」


私の胸は不安で押しつぶられそうになっていた。






「どうして電話もメールも訪問すら無視するんですか?せっかくフィアンセが訪ねてきたっていうのに~」


フィアンセ…?



胸が痛い…苦しい……







「あの…何度も言ってるけどそれは………」

「久しぶりに旭さんに会えて嬉しい~!!私ずっと会いたかったんですからねっ」


旭さんに小走りで近づいて腕にしがみつく恵さん。

少し寄っただけで甘い香水の香りと化粧品のいい匂いもした。


私からはこんな高級そうな匂いはしない。

高いバックも持ってないし、自分にそこまでお金はかけらない…

だから旭さんとは不釣り合いなんだ。



彼の婚約者になれる人は…私じゃない。
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