イジワル社長と偽恋契約
恵さんの印象は今の数秒間で半分以上覆った。

第一印象とは全く別人の彼女が目の前にいて、少し戸惑ってしまう自分がいる。


私は迷ったが断ることが出来ず、彼女と飲みに行くことにした。









「ここの料理美味しいでしょ?よく友達と来るんだ♪」

「そうなんですか」


恵さんとやって来たのはおしゃれで高級そうなイタリアンレストラン。

照明が薄暗くて個室になっていて、赤ワインと小洒落たつまみを食べていた。


彼女はよく喋りとても明るくて、まだ出会って数時間だがいい人だと思った。







「旭さんたら本当に私の事ほったらかしで…本当に信じらんない。何考えてるんだろ」


恵さんの口から旭さんの名前が出る度に胸が痛い。

彼女もまさか今同じテーブルに座っている私も、旭さんに好意を抱いてる一人とは思っていないだろう。







「三井さんて彼の秘書でしょ?何か私の事聞いてない?」

「…いえ」


彼女にとって私はただの旭さんの秘書でしかなく、

自分の婚約者の情報を引き出せる存在でしかないんだ。



私は恵さんが思っている程旭さんの事は知らない。

彼から婚約者がいるなんて話も聞いたことなかったし…





「そうなんだ…あんな素敵な人から求婚された時はすっごく嬉しくて泣いたけど……なんかわからなくなってきた。デートは何回かしたけどまだキスもあっちもまだないし」


デートはしたけどまだ手は出してないんだ…

あの人そういうの早そうなのに。



私はキスしたことあるし…


大事な人には簡単に手は出さないタイプ?

だとしたら腹が立ってくる。





「いつになったらちゃんと結婚出来るんだろ…」


ほろ酔いの恵さんはテーブルに肘をついてワインを飲み、それからずっとブツブツと呟いていた。
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