妖しの姫と天才剣士



「ちぇっ、ずりぃな〜。総司はよぉ〜」



自棄酒を飲み干した永倉さんはまた酒を煽る。



「おい平助!」

「ぐわぁっ。きゅ、急にひっつくなぁ〜っ!」



暴れるが互いに酔っているせいかフラフラしている。



「ねぇ、芸妓さん。僕にお酒、注いでくれないの?」



耳元で囁かれる。



ずっと引っ付いていたことに気がついて慌てて離れる。



「は、はい」



膳に置いてあったお酒を取ると酒を注ぐ。


それに一口、口をつけると私の方へと差し出した。



「……飲んで」

「飲んで?」



これを、私に飲めと?


お猪口には半分以上お酒が残っていて、注ぎ直すには多すぎた。



「そ、飲んで」



お猪口を受け取ると軽く口をつける。


こくんと喉を鳴らすと口の中がピリピリした。



「ん……く……。ほら、飲んだ……よ」



上手く呂律が回らない。



「はい、もう一杯」

「ま、まだ、ぁ……?」



注がれたら飲まないわけにはいかない。


ぐっと意地っ張りの子供のように飲み干すと頭が重くなる。



「ね、ねぇ……。これ……」

「まだ、あるんだけど」

「も、もう……いい––––」



いたずらっ子のように笑みを浮かべた総司の顔。


喉を潤す液体に頭がぼぉっとする。



「そ……じ…………」



重くなった瞼を閉ざすともう何も聞こえなくなった。


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