王子様はハチミツ色の嘘をつく


助手席からえいっと身を乗り出して、極力創希さんの唇に触れないように、彼の口の中に飴を放り込んだ。


「ありがと。美都ちゃんがくれたから美味しい」

「お、美味しいのは、飴の手柄です……!」


照れ隠しにうつむきながら、私も飴を頂いた。

ああ……創希さんって、サラッと甘い発言をするから困る。

レモン味の飴の酸味で口の中がきゅっとすぼまるのと同じように、何度も心臓が縮まってるよ……。





それから、三十分ほどで到着したのは、大きなショッピングビル。プラネタリウムはその最上階にあるらしい。

最寄駅と直結した立体駐車場に車を停めてビルに入ると、創希さんがさりげなく私の右手を取って、ゆるく握った。

思わず硬直して、反応に困っている私に、創希さんは余裕の笑みで告げる。


「いやだったら、振りほどいていいよ?」


……ほら。またそうやって、私に判断を委ねる振りだ。

私が拒めないのを知っていて、わざと言っているとしか思えない。

たとえ嫌だとしても、手を振りほどくなんて行動、相手を傷つけてしまいそうで、できるわけないじゃない……。

内心そんな不平を呟きながら、ほんの少しの力で彼の手を握り返す。

それに気づいた創希さんが満足そうに口角を上げるのを見ていたら、罪悪感みたいなものが押し寄せてきた。




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