王子様はハチミツ色の嘘をつく
“私がいなくなっても、静也をよろしく――”
そんな意味が込められているのであろう、穏やかな瞳をお父様に向けられて、私の涙腺も我慢ができなくなった。
せっかく思い出の味をプレゼントして喜んでもらえたのに、こんな結末、ないよ……。
人の命って、こんなに簡単についえてしまうものなの?
思わず私も静也さんのそばにしゃがみこみ、彼の手と重ねるようにしてお父様の手を握る。
……あったかい。まだ、こんなに“生きている”じゃない。
そのぬくもりを確かに感じるのに、お父様のまぶたがゆっくりと降りてきた。
眠るように、安らかな表情……。まさか、本当に、これで……。
「……っ、そんな……お父様……っ」
「父さん――っ!」
強く呼びかけた静也さんの頬から、涙が一滴頬を伝う。
彼の細い顎をたどって落ちた雫は、閉じられたお父様の瞼にぽとりと落ちた。