王子様はハチミツ色の嘘をつく
「僕は会社を背負って立つ身というのもあり、普段はいろいろな硬い鎧で自分を強く見せているのですが、美都さんといるときだけは、それを脱ぎ捨てて、本当の自分になれます。彼女は僕の弱さも頼りない部分も、丸ごと受け止めてくれる素敵な女性です。
僕はそんな美都さんと、将来を共にしたい……結婚したいと考えています。お父さん、お母さん、どうかお許しいただけますか」
淀みない声でしっかりと語った静也さんに、しん、と静まり返るダイニング。
お母さんがちょいちょい、と肘でお父さんをつつくと、ゴホンと咳払いをしたお父さんが、優しい目をして口を開く。
「大事に育ててきた美都をそんな風に言ってくれる男性なら、私も安心です。美都は昔から泣き虫だったが、そのぶん優しい心を持った子だと、親馬鹿ながら思っていて……自慢の娘なんです」
「お父さん……」
なにそれ……初めて聞いたよ。私、もっと実家に頻繁に帰って親孝行すればよかった。
静也さんの親孝行には協力しておきながら、自分の親のこと、ちゃんと考えてなかった……。
「ホントに、美都は泣き虫よねぇ。昔は男の子に泣かされてばっかりで、少しは言い返しなさいって言うんだけど、ダメなのよ。でも……だからこそ、人の痛みがわかる子だと思う。お母さんから見ても、自慢の娘だよ」
「お、お母さん、まで……っ」
思わず瞳が潤み、声がかすれてしまった私を、浩介が茶化す。
「あはは、また泣いた」
「だって……しょうがないじゃん、これは……」
ますます涙を流す私に静也さんがハンカチを渡してくれて、私はそこに思いきり顔を押し付けた。