王子様はハチミツ色の嘘をつく
「私、両親がいないから……知らず知らずのうちにお義父さんお義母さんにすごく甘えてしまっていました。そんな私の姿って、本当の娘であるお義姉さんにとったら、すごく目障りなのかなって……」
テーブルの一点を見つめて、切なげに志穂ちゃんが語る。
……だから、私があまり実家に帰ってこないと、志穂ちゃんは思っていたの? それは完全に誤解だよ……!
「志穂ちゃん、それは違うよ。そんなこと思わせてしまってごめんなさい。……私はね、ただ拗ねてただけなの」
志穂ちゃんを元気づけるように、私は明るい口調で話す。
「ここに帰ってきても、今家族である四人と私とでは、話が合わなかったり、空気も変わってるかもしれない。それを知るのが怖くて、なんとなく距離を置いちゃってただけなの。……でも、今日帰ってみて、そんなことなかった。たぶん、志穂ちゃんがうちの色に染まってくれたんだね。義姉として、そのことはすごくうれしいんだよ?」
「お義姉さん……」
大きな瞳をうるうるさせて、志穂ちゃんが私を見つめる。こんなに可愛い義妹を泣かせて、私ったらなにをやってるんだろう。
「だから私のことは気にしないで、うちの両親に甘えまくってね。志穂ちゃんのこと、私や浩介と同じくらい、大切に思っているはずだから」
ね、と両親に同意を求めると、ふたりとも「もちろん」とうなずく。
弟が泣き出す志穂ちゃんの頭をポンポンと撫で、ようやく楽しい食事会が始まった。
静也さんは当然家族中の質問攻めに遭ったわけだけれど、嫌な顔ひとつすることなく、お酒が進んでくると、笑窪を作って無邪気に笑っていて、なんだか嬉しかった。
静也さんのお父様の病気のことも話題にのぼり、お母さんは瞳を潤ませながら、私たちにお手伝いできることがあったら言ってねと、静也さんに強く言い聞かせていた。