王子様はハチミツ色の嘘をつく


「行きましょっか、駅」


はにかみながら告げて歩き出そうとすると、つないだ手をぐいっと引かれて、私は不思議そうに静也さんを見つめる。


「静也さん……?」

「……今夜は僕の家に泊まってください。夜通しきみを苛め抜かないと、眠れる気がしません」


彼の恐ろしくも甘い言葉と、熱を帯びた視線に、身体の奥が切なく疼く。

……きっとまた、たくさん泣かされちゃうんだろうな。それでも少しも嫌だと思わない自分は、あきれるくらい彼に毒されているんだと思う。

でも、いつも“苛める”って表現を使うわりには優しく抱いてくれるんだよね。

わざと意地悪を言うのは、照れ隠しなのかもしれない。


「何をにやにやしているんです」

「いいえ。……静也さんの嘘にも、だいぶ慣れてきたなぁって」

「それは困りましたね……明日の朝、もうひとつ嘘をつこうと思っているのですが、すぐに見破られてしまいそうです」

「明日の朝……?」


私はきょとんとするけれど、静也さんは意味深に微笑むだけで何も教えてはくれず……。

なんだか腑に落ちないまま彼のマンションへ一緒に帰り、ひと晩中静也さんに苛め……いや、愛されたのだった。


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