王子様はハチミツ色の嘘をつく


「か、上倉、酔ってる……っ」

「酔ってんのは美都さん。俺は一滴も飲んでないって」

「そ、そっか……参ったなも~……こうなったら飲んじゃうからね!」


ジョッキに残っていたお酒をぐびぐびとあおる私を見て、上倉が「へーき?」と苦笑する。

平気……ではない気がするけど、他に照れをごまかす手段がわからなくて、私は次々お酒を胃に流し込んだ。


――その結果。


「……美都さん、ほら、もうちょいしっかり歩いてくれません?」

「ん~……私のせいじゃないろ、地面が歪んでるろ……」

「……とと。あぶね」


上倉に支えられながら店を出た私は、舌も回らないしふらふらだけど上機嫌。

ちゃんと家に帰れるかなぁ……帰れなかったらその辺で寝ちゃえばいっか。

なんて、この上なく楽天的な思考になっている。


「あーあ……マジ、拷問」

「……何か言った?」

「いーえ。ちゃんと家に送り届けますからご心配なく」


なぜだか嫌味っぽく言われたけれど、上倉が送ってくれるなら安心だ。

火照った頬に当たる夜風の心地良さに目を閉じ、そんなことを思っていた時。

私の肩からずり落ちそうになっているバッグの中で、携帯が鳴った。


「あ~……電話ら……上倉、代わりに出て……」

「いやいや、それはダメでしょ。ほら、出してあげるから自分で……」


スマホをバッグから出した上倉が、その画面を見て急に黙り込む。

不思議に思って「だれ?」と尋ねると、怖い顔をした上倉が、私の目の前にスマホをつきつけてきた。



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