王子様はハチミツ色の嘘をつく

女子会ともうひとりの王子



七時を回ってもまだやりたい仕事はあったけれど、『七時と言ったのは僕ですし、蜂谷華乃との約束に遅れるのはのちのち面倒です』と、社長は私を先に帰してくれた。


会社のビルを出て早速華乃に連絡すると、六本木のフレンチでご飯を食べようということになった。

移動中にスマホで調べたら、ミシュランで星を獲得したことのあるお店らしい。

予算もかなりお高めだけれど、今朝秘書課で涼子さんたちと雑談しているときに何気なく話題になった“秘書はレストランに詳しい方がいい”という話を思い出し、後学のためにも行ってみることにしたのだ。


到着したレストランは、夜の街に映える都会的でシックな白い建物。

中に入ると、出迎えてくれた女性スタッフに蜂谷華乃の名を伝えた。

すぐに案内してもらえた二階のテーブル席にはすでに華乃がいて、私に小さく手を振る。


「ごめんね! 待った?」

「ううん。っていうか、先に一杯飲んでたからこっちこそゴメン。料理とワインも勝手に決めちゃったよ」


細いシャンパングラスを持って、悪戯っぽく微笑んだ華乃。

私はほっとしながら席に着き、少し暗めだけれどあたたかい色の照明に照らされた、ラグジュアリーな内装をキョロキョロと眺めた。


「素敵だねー。こんな所初めて」

「えー、嘘。静也さんなら色々連れていってくれるでしょ?」


探りを入れるというよりは、単なる好奇心という雰囲気で、華乃が聞く。

そういえば社長とデートのようなものはまだ一度もしたことがない。というか、よく考えたらまだ接近してからほんの数日なんだよね……。



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