首吊り自殺
 
「うわあああ!」


部屋に入ってから一瞬の間があって、誰かの叫び声を聞いた。それし、しばらくしてから気がついた。その叫びは“誰か”のものではなく、“僕”のものだということに。

それに気がついたら、自然と叫びは止んでいた。だが、僕の体はどうしようもなく震えていた。

部屋の中央でぶら下がるそれは、とても恐ろしかった。暖かみの欠片もない物質。

異様な空気に吐き気がして、僕はその場で吐いてしまった。

昨日、一緒に話し、一緒に笑っていた。鈴の音のような綺麗な声も、心穏やかになる優しい笑顔も、全て覚えている。それなのに、今のそれは、昨日とは似ても似つかない。

そのあまりの差に、僕はもう一度吐いてしまった。


「どうして…。」


僕の声は誰にも届けられず、それに吸い込まれていった。僕の中の全てが奪われていく。

涙が一筋伝った。


「ごめんね。」


その言葉はストンと僕の胸に落ちていった。

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