フルブラは恋で割って召し上がれ
「マネージャー? ど、どうしたんですか?」
駆け寄ってきたのが私だと分かると、斎藤氏はブロック塀から離れ、私が側にくるのを待ち構えるように私の方へ向き直った。
「君に聞きたいことがあって」
「聞きたいこと……? あ、店長の容体ですか? まだ腰は痛そうでしたけど元気でしたよ」
「いや、そうじゃなくて。――まぁ、それは何よりだが。私が聞きのは、さっき君が持っていたフルーツブランデーのことだ」
斎藤氏がアパートの前で待っていたってだけでも驚いているのに、ここに来た理由がフルブラ?
「もし良かったら、作っているところを見せてもらえないかと。――あ、いや。もう時間も遅いし、次の機会でも構わないんだが」
そう言った時に、カサカサとポリ袋の鳴る音が聞こえてきたので、音のした方に目をやると、斎藤氏が後ろ手に隠したポリ袋が見えた。楽市のロゴの入ったやつで、中からりんごが顔を覗かせていた。
その様子がなんだか可愛らしくて、私はクスっと笑ってしまう。
「せっかく来てくださったんですから、どうぞ中へ」
部屋の中に招き入れたのはいいけれど、ワンルームだから玄関を入ると部屋の中がまるっと見えてしまうのがちょっと恥ずかしい。
ベッドの上にパジャマを脱ぎ捨てたままなのを発見して、慌ててダッシュしてベッドの中に押し込み、何ごともなかったような涼しい顔でキッチンに立つマネージャーの元へ戻ると、マネージャーは和也作の棚をいたく気に入ったようでしげしげと眺めていた。