フルブラは恋で割って召し上がれ
「え? ちょ、ちょっ! マネージャー! ダメです。離してくださいっ!」
両方の手首をしっかりと押さえつけられて、私は身動きも出来ずに足をバタバタさせる。
「ダメ? どうして? 愛情、注いでくれたのに?」
すぐ側に斎藤氏の顔。すごく真剣な表情。――これって、酔ってるの? そうじゃないの?
ぴったりと重ねられた胸と胸。私の左肩に埋められた斎藤氏の顔。
(ダメっ、私、肩、弱いのっ!)
思わずピクンと反応してしまった私の身体。それを察したのか、斎藤氏がカリッと触れる程度に私の肩を噛んだ。
「……っ……ぁ」
唇を噛んで声を出すまいって思っていたのに、気持ちの良さに『身体は正直よのぅ』ってアレを実戦してしまう。
首筋に当たる斎藤氏の唇。左手の戒めが解け、その手が私の腰の下に回された。
「マネージャー! ダメですっ!!」
自由になった左手で思い切り斎藤氏の胸を押しのけたその時、
「ぐーっ」
耳元に聞こえてきたのは、気持ちよさ気な寝息。
「あ、あの……。マネージャー?」
どんなに呼んでも身体を揺すっても、返ってくるのは「ぐーっ」っていびきだけ。
私はほうほうの体で斎藤氏の身体の下から這い出すと、乱れた髪のままでベッドの上に正座して、がっくりと肩を落とした。
「なにやってるんだろ……この人」
私は眠りこけている斎藤氏の頬をぺしぺしと叩いてからベッドを降りると、斎藤氏が脱ぎ散らかした服を拾い集めてハンガーにかけた。
「なにしてるんだろ、私……」
刻々と更けていく時間の中。ベッドを占領された私は、床にぺたんと座り込んで途方にくれるしかなかった。