フルブラは恋で割って召し上がれ
 
 その時、部屋のどこからか携帯のバイブ音が鳴り響き始めた。

「あれ? 私のスマホはバイブ設定してなかったよね……。あ、もしかして、マネージャーの?」

 慌てて私は斎藤氏のスマホを探し始める。ハンガーにかけたスーツから音はしていないし、脱いだときにどこかに落ちちゃったのかな?
 床の上を四つん這いになって音のする方に目をやると、ベッドの側のテーブル下で画面を点滅させながらバイブ音を繰り返しているスマホを発見した。

「あった、あった。……でも、私が出るわけにいかないよね……」

 黒木とかけてきた人の名前が表示されているスマホを持って、私は眠っている斎藤氏の元へと膝歩きで近づいていった。

「マネージャー、黒木さんからお電話です。おーい、聞こえますかー?」

 耳元で大きな声で呼んでも何の反応もなく、こちらに背を向けてただただ眠りこけている斎藤氏。
 そうこうしているうちに着信音も切れてしまう。ベッドの側に膝立ちしたまま、しばらく斎藤氏に呼びかけたり揺り起こしたりしてみたけれど何の反応もなくて。

「しょうがないなぁ……。枕元に置いておこ……」

 ため息をついて、スマホを枕の側に置こうとしたその時、再び黒木さんからの着信と寝返りを打った斎藤氏に巻き込まれる事件が同時に発生。

「きゃっ!」

 斉藤氏の右腕が私の首をがっちりと捉え、抱き枕みたいに抱え込まれてしまった。
 しかもその時にスマホの画面を触ってしまったらしく電話が通じちゃったらしい。右手に握りしめていたスマホから微かに「もしもし?」って男の人の声が聞こえている。

 ど、どうしよう。通じちゃった。私、話してもいいのかな? とりあえず状況を説明してかけ直してもらうとか?

 覚悟を決めて、斎藤氏に首をホールドされ変な風に身体を捻ったままで「もしもし?」と電話に応じてみる。



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