おいてけぼりティーンネイジャー
1学期の期末テストが終わると、まもなく夏休み!
気持ちが開放的になるのか、立て続けに何人もに告白された。

「ごめんなさい。今、誰ともお付き合いするつもり、ありません。」
もう何度となく繰り返したこの言葉……校内放送で周知させたい気分で私は、ため息まじりに言った。

「なんで!?いいじゃん!そう難しく考えないでさー、イロイロ遊びに連れて行ってやるからさー。」

ほー。
このヒトにとっては、付き合うイコール遊びに行く、なのか。
価値観が違い過ぎるな、と私は首を横に振った。

「毎日の勉強で読書する時間を捻出するのも大変なんです。申し訳ありませんけど、お付き合いは無理やと思います。すみません。では……。」

会釈して、その場を離れようとしたけど、手を掴まれてしまった。
「待ってよ!勉強、見てあげるからさー。俺、ヤマ張るの得意なんだぜ。」

「……。」
呆れてしまって私は言葉を失い、彼に掴まれてる自分の手をどうやって振りほどこうかと見つめた。

私が黙ったのを、自分の都合のいいように解釈したのだろう、彼は得意そうに言葉を継いだ。
「じゃ、放課後迎えに行くから。俺、バイクだから、ツーリング連れてってやるよ。気持ちいいぜ。」

「はい!そこまで!うち、バイク登校禁止よ!生徒証出しなさい!」
キビキビとした女性の声が背後から飛んできた。

慌てる彼からようやく手を振りほどき、ホッとする。
振り返ると、派手な赤いジャージの美人さんが両手を腰にあてて仁王立ちしていた。

……平原まゆ先生だ!

かっこいい!と見とれている間に、先生は彼から生徒証を取り上げた。
「放課後、生徒指導室に取りにいらっしゃい。ちゃんと来なきゃ親御さんも呼ぶからね。あー、それから!大村さんは、今年の1年生の中でぶっちぎりトップの超優等生だから。変なちょっかい出すと、恥かくわよ!」

ぶつぶつ文句を言いながら彼が立ち去った後、平原先生が振り返って笑いかけてくれた。
「大丈夫?……もてるのも大変ね。」

この人が、暎さんの中学の時の陸上部の先輩か。
遠巻きに確認したことはあったけど、こんな近くでお話するのは初めてで、私はなんだかドキドキしていた。

「ありがとうございます。……今だけですわ。珍しいんやと思います。」
「そう?」

平原先生は、私の肩をポンっと叩いた。
「ま、困ったことがあったら何でも相談しにいらっしゃい。勉強以外でね。恋の悩みでもいいわよ?」
サバサバとそう言って、平原先生は去って行った。

かぁーっこいーっ!!!
私は、すぐに暎さんにメールで報告した。

<今、はじめて平原まゆ先生と話しました。めっちゃかっこいい!素敵なヒト~。>

さ、図書室行こう。
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