おいてけぼりティーンネイジャー
ああ、そっか。

どうしても、コイバナをしようとすると、自分のいやらしさが鼻につくんだ。

決して秘密主義じゃないけど、由未ちゃんに暎さんとの話ができない自分にようやく気づいた。

「そんなことないと思うけど?知織ちゃんは、自分に厳しいねえ。」
由未ちゃんはそこまで言ってから、ちょっと考えて、申し訳なさそうに言った。
「もしかして、浮いた話のない私に気遣ってるんやったら、やめてな。私、知織ちゃんのノロケ話聞きたい。それに、私自身も誰か好きになったら、知織ちゃんに相談に乗ってほしいねん。」

「もちろん!てか、そんな変な気ぃ遣うわけないやん!……由未ちゃんのお兄さんみたく上手くアドバイスできるようにがんばるから!」

「……お兄ちゃん?」
タイミングよく、そのお兄さんから由未ちゃんに電話がかかってきた。
「もしもし?うん、もうすぐ電車降りる。え?お迎え?近いしいいのに。……はあい。お願いします。」
電話を切った由未ちゃんはニコニコしてた。

「お兄さん、駅まで迎えに来てくれはるの?」
「うん!」

……由未ちゃんが誰かを好きにならない限り、お兄さんもまた由未ちゃんを手放せないんだろうな。
由未ちゃんの無邪気な笑顔に、こっそりため息をついた。


「お帰り。どうだった?」
お兄さんの息が白い。

「最高!盛り上がったわ~。あ!来月発売の新曲やらはってんけどね、どう聞いても知織ちゃんねん!」
うれしそうに由未ちゃんがお兄さんに飛びつく。
とろけそうな瞳でおにいさんは、由未ちゃんの髪を撫でた。

「知織ちゃん、順調?」
そう聞かれて、私は大きくうなずいた。
「おかげさまで!……私も、暎さんも、身辺整理できてきたみたいです。」
「そう。よかった。」
お兄さんのウインクは私を自然と笑顔にしてくれた。

暎さんから電話がかかってきたのは、夜中の2時。
打ち上げのあと、スタッフと新地で飲んでいるらしい。
「まだ外ですか?お体、気を付けてくださいね。明日は、東京で収録だから会えないでしょうけど。」
『やだっ!逢いたいっ!知織、来てよ。』

……酔っ払い駄々っ子モードなわけね。

「行きますよ。来年……違うか、再来年、東京の高校に進学する許可を親から得ました。それまで、おとなしく、いい子で待っててくださいね。」

暎さんの酔いが醒めたらしい。
『ほんとに!?』

「はい。まあ、祖父母と住むし、受験勉強もあるから自由じゃないけど、今よりは暎さんと一緒にいられると思います。」

『そっか。……ありがとう。無理させたね。』

そんな風に言われるとは思っていなかったので、私は、うるっと泣きそうになった。
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