土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~
わらしへの誘惑


池田屋の件も、落ち着き、普段通りとは、いかないが、忙しく過ごしていた。



そんなある日・・・。




今宵は、やけに、静かだな・・・。




部屋で、書簡の残りを片づけようと、厠から、戻る途中で、梓が、ボーッと、立って、何か、ブツブツ言っている。



近付いても、全く、気付いていない。





梓「だって、あんな色っぽい顔見たら、ドキドキするし・・・。」





土方「何が、ドキドキするんだ?」




声をかけると、真っ赤な顔で、梓が、振り向いた。






梓「土方さん、驚かさないでくださいよ。」





いつもは、この時間、総司と一緒なのに、今日は一人か?





土方「別に、驚かせてる訳じゃねぇ。ん?一人か?」




梓「はい。皆、どこかへ行ってしまって・・・。」





昼間の会議の終わりに、皆が、島原に行くと言ってたっけか?




土方「そういや、今宵は、島原に行くとか言ってたな。」




梓「島原?」





梓は、それが、何か、わかっていないようだった。






仕方ない。俺は、教える事にした。





土方「島原っていうのは、おなごと夜を明かす所だ。」





梓「おなごと夜を明かす?・・・って、それって・・売春!?じゃあ、今日、皆は、売春を・・・。」





土方「まぁ、そうだな。この時代では、当たり前の事だ。その辺でも、金に困ったら、ござ敷いて、体売ってる奴もいる。」





梓「そんな・・・。って、今日って事は、沖田先輩も・・・?」





土方「あぁ。多分な・・・。」




梓「沖田先輩って、純愛のイメージあったのに、なんか、ショックです・・・。」





土方「相手が、いねぇなら仕方ねぇだろ?」




梓「土方さんも・・・?」





梓は、俺を軽蔑する眼差しで俺を見てきた。





土方「変な目で、見んな。」




俺は、梓の頭に手を置いて、視線を閉ざす。




土方「でも・・・。お前が、相手してくれるなら、そんな所には行かねぇけど?」




冗談っぽく言ってみたが、結構、本気だったりする。




梓「っ!」




様子を見ていると、梓の顔が、どんどん赤くなる。





梓「ひ、土方さん、冗談は止めて下さい。」




土方「冗談じゃなけりゃ良いのか?」





今宵は、二人きり。




邪魔者の総司も居ねぇ。




こんな好機を逃すわけがねぇ。





すると、梓は、鼻からツーッと、鼻血を垂らした。




え?何で鼻血?




土方「オイっ!お前、鼻血、出てるぞ!」




梓「あ・・・。」





土方「ぷっ。お前、こんなので、鼻血、出してたら、この先、どうなるんだよ。くくくっ。」





いつもおなごを口説いている方法が、梓には、通用しない。





梓は、紙を、鼻に、詰めた。




土方「ぷっ。本当に、この姿、年頃のおなごの姿では、ないな。くくくっ。」




梓「そんな事、言わないでください!元はといえば、土方さんに、物凄い色気があるのがいけないんです!」



土方「なんだそりゃ。誉めてんのか?」





梓「まぁ。半分は・・・。」




土方「くくくっ。そうか。俺の色気は、お子ちゃまの梓には、早かったわけだ。」




梓「もぉ、知りません!」




土方「そうだ。貰いモンの菓子があるが、食べるか?」




梓「欲しいです!」




土方「ぷっ。わらしだな!」




拗ねてた梓が、菓子で、機嫌を直している。




そんな姿も、愛らしいと思ってしまう。





土方「今から、来るか?」




梓「はい!」



俺の部屋で、梓の為に買った“貰いモン”の菓子を出すと、喜んで食べている。




そして、他の奴に話しても、わかってもらえない未来の話を、梓は、嬉しそうに話している。




まるで、向こうの時代の昼休みだ。




すると、梓は、ウトウトしだす。




コテッ。




梓は、俺の肩に、頭を預けて、無防備に寝ている。





土方「ちったぁ、警戒と意識をしろよ。俺を、何だと思ってる・・・。」




俺は、梓を、抱きしめて、口付けをした。





土方「この俺が、おなごと一夜、一緒にいて、何もしないなんて事、無かったんだぞ。ったく。」




梓は、俺に抱きついて来た。




そっと、梓を、畳に下ろして、布団を、用意する。




そして、一緒に、布団に潜ると、梓は、抱き枕と勘違いしているのか、俺に抱きついて来た。





土方「そういや、さっき、抱き枕を持ってきたら良かったとか言ってたな・・・。こりゃ、生殺しだ・・・。」




梓を見ると、安心しきった顔で寝ている。





俺は、梓に、口付けをして、首に、唇を這わせた。





梓「ん・・・沖田先輩・・・。」




俺は、動きを止めて梓を見つめる。





土方「っ・・・。何で、総司なんだよ・・・っ。」




俺は、ギュッと梓を抱きしめた。




梓「土方さん・・・。これも、食べて・・・いい・・・。」




土方「・・・。ぷっ。夢まで、菓子、食ってるのかよ。まぁ、俺の夢を見てるなら、さっき、総司の名を呼んだことは、聞かなかったことにする・・・。」




俺は、梓の唇に、もう一度、自分の唇を重ねて、ギュッと強く抱きしめた。




そして、ゆっくりと目を閉じた・・・。


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