貴公子?いいえ、俺様男です

京都の夜は更けて

ポツン…ポツン…

ライトアップされた清水寺を後にした辺りで、雨がぱらついた。

「…お天気お姉さん、嘘ついたんか?」

「日中、あんなにいい天気だったのに、
秋の天気って、本当に気まぐれ〜」

どこかの店で雨宿りしようにも、夜になり、閉店時刻を過ぎている。

ポツン…ポツン…

「そんなにひどい雨でもないから、走るか…」

勘が外れた…

ザーーッ…

二人とも、びしょ濡れだ。
これじゃあ、タクシーにも乗れない。

「ははは…

けっこう、濡れましたな〜」

里菜ちゃんの声が震えてる。

見ると、身体も小さく震えてる。

バサッ…

「これ着て」
俺は、ジャケットの中に着ていたセーターを、里菜ちゃんに着せた。

「えっ?シュウさんが風邪ひいちゃう」

「いいから、着てて」

最寄り駅まで来た。

うーん。どこか着替えるとこ…

……着替えるとこ…

「ホテル発見!空室あり‼︎ 」

よし!俺はついている。

里菜ちゃんの手を引いて、見つけたホテルへ入る。

「えっ⁉︎…シュウさん?ここ?」

なんだよ…何うだうだ言ってんだ?

「早く服を乾かそう。風邪ひく前に」

一刻も早く、熱いシャワーを浴びて服を乾かしたかった俺は、深く考えずに、その建物に入ったんだ。







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