強引な次期社長に独り占めされてます!
「……実はしっかり日本人してたんだな」

呆れたような声音に頷いて、ネギを刻み始める。

「それなりには……」

しばらくして、どこかソワソワしている主任が視界に入ってきた。

実はキッチンからちょっと視線を上げただけで、座っている主任がよく見えるんだな。

落ち着きがない主任って、始めてみるかもしれない。

「暇ならテレビをつけていいですよ」

「つーか、ひとりでテレビもつけずに何やっていたんだよ」

ちらっと見られて、叱られている気分になるのはどうしてなのかな?

「今日は読書ですかね。煮物しながら読書って、ちょっと頭に入りきらなくて読み直ししてました」

「読書好きか? 何を読んでいたんだ?」

「……それは秘密です」

まさか童話を読んでいたなんて言えません。

微かな愛想笑いを返すと、主任は目を細めて呟いた。

「ふーん……」

くるりと部屋を眺め、腕を組むといきなりベッドの下を覗き込んだから、ぎょっとして包丁を取り落としそうになる。

「しゅ……主任!?」

「隠す場所は女も男と一緒だなー? 見てもいいか?」

「ダメに決まってます!」

こんな年をした女が童話読んでますって、どこまでメルヘンだと思われるって言いますか!

「まぁ、そう言わず。お前の事だから別に男の裸が載った写真雑誌でもないだろ?」

私の事だからって、普通に考えてもそんな女性はいないで……いや、いるのかな?

ところで、男性が裸の写真雑誌なんて売ってるの?

それって、コンビニに……?
< 133 / 270 >

この作品をシェア

pagetop