強引な次期社長に独り占めされてます!
でも、いきなり主任がベッドの下に手を伸ばしたから、包丁を放り出して慌てて駆け寄った。

「待って! ダメですダメ!」

絶対にダメー!

と、思った瞬間に、足元がずるっとずれて、飛び込んできたのは振り返って目を丸くした主任の顔。

ゴチンとおでこが何かにぶつかって、暖かい何かに包まれる。

そして、聞こえてきたのはくぐもった呻き声。

「……お前、なぁ」

目を開けると、主任に抱きとめられていて、視線をあげると鼻を押さえて痛そうな涙目……。

鼻に当たっちゃったのかな……。

「本当に何もないとこでコケるな、お前は……!」

「……や、何もなかったわけじゃなくて、何かに足が……」

見ると、主任のコートが無惨にぐちゃぐちゃになっていた。

「……ごめんなさい」

「これは、放り出しといた俺にも責任があるみたいだな」

「そもそも、主任が人の秘密探ろうとしなかったら起こらなかった出来事だと思います」

「それはそうだか。とりあえず可南子……」

か、可南子っ!?

いきなりどうして名前を呼び捨てに?
主任、頭も打った? 打ち所が悪かった!?

「ティッシュあるか?」

鼻を押さえている手から、赤いものが見える。

「ち、血がぁ! ごごごめんなさい! 真面目にごめんなさい!」

アワアワしながら両手でその手を押さえたら、主任の目がこれ以上ないくらい見開いた。
< 134 / 270 >

この作品をシェア

pagetop