強引な次期社長に独り占めされてます!
「ちょ……待って待って! 今のなし今のなし! 勢いで言った言葉だから! 待って下さい」

湯飲みをテーブルに置いて、慌てて両手を振ると、そんな私を主任は一瞥した。

「やだ」

真剣な顔を、お互いに見合わせながら無言になる。

……いい大人が“やだ”の一言で済ませてきたよ。

主任はいくつだっけ?
確かに31歳のはず。はずなのに……!

「あの、だから……」

「好きじゃないなら好きになれ。少なくとも嫌われてはいないはずだし、俺はお前を可愛いと思うんだが」

「嫌ってはいませんけど、あの、だから……」

……今、素っぴんなのに可愛いとか言われた?

慌てて顔を隠すと、小さな笑い声が聞こえる。気がつけば、除夜の鐘がなくなっていた。

「……新しい生活に慣れるんだな。明けましておめでとう」

指の間から見えた主任は、とてもとても清々しい笑顔に見える。

新しい年に、いろいろと始まってしまったらしい。










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