強引な次期社長に独り占めされてます!
思いきり突き飛ばしたら、けっこうあっさり手放されて、かえって私がフラフラするハメになる。

通りすぎるお化けたちに冷やかされるから俯くと、その頭にズボッとフードを被された。

「真っ直ぐ帰れよ」

顔を上げると、死神さんは私に背を向けて、すでに改札の方へ歩きだしていた。

……頭の中は真っ白だけど。

とにかく、ハロウィンの魔法の時間はもう終わる。

何だかちょっと寂しいけど、楽しい時間なんてあっと言う間に過ぎてしまうなぁ。

フードを深く被り直したら、死神のさんが立ち止まった。

「ああ、そうだ。魔女さん」

振り返り、死神さんが何か投げてきたから慌てて受け止める。

「イタズラしなかったからソレやるよ」

そう言うと死神さんは手を振って、今度こそ改札を出ていった。

私の手には黄色いビニール。

オレンジのイラストと、レモンのイラストが描かれたキャンディがいくつも入っている。

トリック・オア・トリート?

私は、けっこうイタズラしたような気がしないでもないんだけど。

「甘党なのかな。死神さん……」

ぼんやりとした呟きは、街の喧騒に吸い込まれる様に消えていった。









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