強引な次期社長に独り占めされてます!
こうして見ると、つくづく雄之さんて整った顔をしているよね。

キリッと真面目な顔をしているのが仕様だと思っていたけど、たまに意地悪そうになったり、子供みたいにわがまま言ったり笑ったり……。

ぼんやりしていたら野間さんが楽しそうに挨拶をしてから帰り、次に楢崎さんが立ち上がる。

「上原。先に上がるから事務所の鍵よろしくな?」

楢崎さんはからかうように私を眺めて、それからニヤリと笑う。

「若いっていいなぁ~?」

……思いきりからかってから帰っていくから真っ赤になった。

雄之さんが、こんなとこでおかしな事をするからだからね!

真剣に書類を眺めていた彼は、少しだけ罰が悪そうに顔を隠し始める。

「悪かった……」

「本当です。ここは職場ですよ」

「わかってる。いや、わかってた」

ボソボソ言いながら承認印を押して、雄之さんは書類をしまうと、キリッとした顔で私に向き直った。

「可南子が足りない」

「はあ?」

思わず出てしまった低い声に、パッと口を押さえる。

「決算期だから俺は残業ばかりで帰りは別々だし、仕事が忙しいからお前は帰り際には疲れてるし、仕事中は幸村が目を光らせてるし、まわりもいるから話せないし……」

え? 何? 何か我慢してたってこと?

そりゃ私だって、毎日バタバタしてる主任に遠慮して、仕事以外で会うのは控えてたけど……。

「あーもー……やっぱり早かったかなー……。一回手にはいると、触りたくてウズウズするんだけど」

「……はぁ」

雄之さんて……。

「変態?」

「変態じゃねーよ! 普通の男の反応だろうが!」

「芽依の彼氏の柊君だって、そんなにいつもいつもべったりしてないもん」

「俺はするんだ」

……そんなことを、真面目な顔をして言われても、どうすればいいの。
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