強引な次期社長に独り占めされてます!
「情けない声を出すな。お前は過保護な友達に守られて、少し世間知らずのようだから社会勉強と思え」

それには反論できない。

芽依の影に隠れて生きてきたのは間違いないから。

「わからない訳じゃないんだけどな」

ポツリと呟く主任を見上げながら隣りを歩く。黙って見上げていたら、困ったような視線が下りてきた。

「とりあえず、主任はやめようか」

「え。でも……」

主任は主任だし……。

「今日くらい名前で呼ぶ……というのは、ハードル高そうだが、苗字で呼ぶのは出来るだろ」

名前を知りませんとは言えない雰囲気だけど、役職名抜きで呼ぶのもなかなかハードルは高いと思う。

でも、呼ばないと主任は引いてくれそうもないし……。

「上原……さん?」

「そうそう。ちょっとはデートらしくなっただろう?」

カラッとそう言って、連れていかれたのは言っていた通りに水族館だった。

水族館なんて子供の頃以来。

静かで、薄暗くて、どこか青い空間をゆっくりとふたりで歩く。

まわりを見ると子供連れか、若いカップルかのどちらかだ。

でも、女の子の多くは隣りの主任を振り返る。それから彼女たちの視線は私と繋がれたままの手に向かった。

……主任はイケメンだもんね。実は隠れ面食いの芽依がイケメンだって認めてしまくらいに。

世の中の人は、私と主任もカップルに見えているんだろうか。

思わず前髪に手をかけようとしたら、

「こら」

小さく叱られて、ギクリとした。
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