強引な次期社長に独り占めされてます!
「じゃ、俺はこれからまた出なきゃいけないから」

「ま、待って下さい」

咄嗟にジャンパーを掴んだら、高井さんは驚いたように見下ろしてくる。

「な、なに?」

「この飴。どこに売っているんですか?」

「飴? ああ、これはうちの近所の商店街にあるキャンディショップ。オリジナルだって言っていたから……俺はもう持ってないけど、買ってきてあげようか?」

「あ、いえ……」

そこまで欲しいというわけじゃないし。買ってきてもらうのは申し訳ない。

ジャンパーを掴んでいた手を離すと、どこか不思議そうにしながら高井さんは微笑む。

「じゃあ、行かなきゃいけないから。明日はよろしくね?」

「あ。はい」

返事を返して、歩いて行く高井さんの後ろ姿を見送った。

……もしかして、彼が死神さんなんだろうか?

確かに死神さんは身長が高かった。
けど、もう少しイメージ的には高いような気がする。

声の感じは似ている。
……ような気もするけど、何かが違うような感じもした。

もらったキャンディで判断するのはどうかと思うけど、オリジナルキャンディだと言うことは、持っている人は限定されるだろうし。

そもそも、食事のお誘いに『はい』って返事をしてしまったからなぁ。

一回食事に付き合えば気がすむなら、それはそれで仕方がないと言うか。

彼が“死神さん”なら、変なことにはならないと思うし……。
< 73 / 270 >

この作品をシェア

pagetop