THE 番外編。
この日、院内中の話題はバレンタインで持ち切りで、行った場所のほとんどでその話を切り出されるものだから、チョコをもらったわけでも爆食いしたわけでもないのに、すでに胸焼けしそうになっていた夕方。
いつも以上に疲労感を抱えつつ、更衣室で着替えを済ませていると、業務を終えた小島さんが入室した。
あの一件以来、仲がいいとは言えないまでも、同期として世間話くらいはできるまでに関係は修復していた。
「お疲れさま。」
『お疲れ。』
いつも誰かしら更衣室にいるから、室内で小島さんと2人きりというのは随分久しぶりな感じがする。
『あー、今日も疲れた~!』
「慌ただしかったもんね、今日は。」
今日は、薬剤部で急遽、インフルエンザによる欠員が一人出てしまったため、通常よりも一人一人の仕事の負担が多くかかってしまっていたのだ。
特に小島さんはそのシワ寄せが行ってしまい、残業をしていた一人だ。
前田先輩はすでに業務を終え、帰宅している。
『忙しすぎてバレンタインどころじゃないよ、まったくー。』
そう言いつつ、私の背後のロッカー前で白衣を脱いでいる小島さんに対して、私は複雑な気持ちを抱えていた。