恋は死なない。
出来上がったドレスを依頼主に着てもらい、依頼主が満足そうに微笑んでくれるときにはいつも、佳音も何とも言えない幸せに包まれる。
今日の幸世の姿は、いつも願う幸せのみならず、その向こうにある切実な願いを、佳音の中にもたらした。
本当に幸せになってほしいと……そして、和寿を幸せにしてあげてほしいと、心から願った。
これまでの依頼主の場合、このタイミングでその姿の写真を撮らせてもらって、それを壁際の棚のギャラリーに並べていた。
しかし、この日の佳音は、幸世のこのドレス姿を眺めるばかりで、写真には残さなかった。
最高傑作を自負する出来のドレスだったけれど、その写真を目にするたびに、苦しいほどに切ない出来事を思い出さなければならないと思ったから。
一方の幸世の母親は、娘の一生で一番に晴れやかになるであろう姿を、スマホを取り出してそのカメラの中に収めている。
「オーダーメイドのドレスなんて、お金がかかるばかりでどうなの?って思ってたけど、本当に素晴らしいわね」
素材に見合った繊細なデザインのみならず、体に合わせてピッタリと吸い付くような、ドレスと幸世との一体感に、母親も感嘆の声を上げた。
「そうでしょ?このドレスを見てしまうと、他のドレスなんて、絶対に考えられないわよ」