恋は死なない。

 再会




「あら、私ったら、ごめんなさいね。お茶も出さずに」


魚屋の奥さんが、しんみりとしてしまった空気を変えようと、明るい声を出した。


「いえいえ、私はこれで失礼するわ。お店、あんまり留守にできないから」


「まあ、そう?」


挨拶を交わしながら、魚屋を出ていく花屋の店主が、佳音の方へと振り向く。


「佳音ちゃんは、ゆっくりしていって。それじゃ」


「そうよ、佳音ちゃん。お茶、飲んでいって。赤ちゃんのこと、いつ産まれるのかとか、いろいろ教えてほしいわ」


奥さんからもそう引き止められて、佳音も遠慮がちにうなずいた。


「なんだか、孫ができるみたいで、楽しみだなぁ!」


おじさんも気を取り直して、ニッコリと佳音に笑いかけると、その隣にもう一度腰を下ろした。


「ちょっと、アンタ。お店は?女同士の話をするんだから、アンタはお店番してなさいよ」


お茶を入れながら、奥さんが振り返って言う。すると、おじさんも眉間にしわを寄せて、口をとんがらせた。


「な、なんだと!俺だって、佳音ちゃんと話がしたいんだよ!お前の方が店番やってろよ!」


夫婦喧嘩が始まってしまいそうな雲行きに、佳音はただ息をひそめて、おじさんと奥さんの顔色を交互に窺った。


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