恋は死なない。
それが今、現実となって和寿はいつも佳音の側にいてくれて、抱きしめてくれている。これ以上の“幸せ”なんてあるはずがない。
ずっと求め続けていた“幸せ”の中にいるはずなのに、佳音は気づいてしまった。
幸せという光が明るければ明るいほど、濃く浮き立ってくる影のようなものを。
和寿は、何も言わず震える佳音を包み込むように、両腕で抱きしめた。
「大丈夫。僕はずっと君の側にいるよ。君とお腹の赤ちゃんは、僕が守るから……」
佳音を安心させるように、優しく囁いてくれる。けれども、佳音は同じような言葉を返せなかった。
――和寿さんは、幸せ?
きっと和寿は、“幸せ”だと答えてくれるだろう。それでも佳音は、自分に向けられたものと同じ問いを、和寿に投げかけることが、どうしてもできなかった。